AWSやShopifyが生まれたことをきっかけにUSでは2010年頃からD2C(Direct To Consumer)のブランドやスタートアップが多数登場しました。有名な例で言えば、Everlane(ファッション)、Warby Parker(メガネ)、Glossier(スキンケア/化粧品)、Away(スーツケース)、Casper(マットレス)、allbirds(シューズ)など、様々な分野で著名なD2Cスタートアップが現れてきました。
そうしたD2Cは最初は実店舗は持たず販売チャネルはECのみ、顧客獲得チャネルは主に検索とSNSによるオーガニックトラフィックとオンライン広告のみで成長していきます。
しかし、売上が1000万ドル(約1400億円)を超えたあたりから、オンライン広告で顧客を獲得するよりも、オフラインで顧客を獲得する方が効率的となるタイミングがやってくると言われています。またWIKY LUXという化粧品D2Cの例では、オフラインで獲得した顧客の方がリピート顧客に3倍以上なりやすいといった事例もあり、D2CやそれまでEC専業でやってきた企業は、さらなる成長のため、実店舗展開を検討しはじめます。また、近年では大手ブランドでも新商品プロモーションや顧客獲得のため期間限定のポップアップストアを開く場合もあり、「スモールスタートで実店舗展開をはじめたい」という需要が存在しています。
一方で実店舗への進出は非常に敷居が高いです。実店舗は、店舗出店計画、テナント契約、店舗デザイン・設計、什器調達、スタッフ獲得、シフト管理、在庫管理、発送管理、運営フローやマニュアル整備、接客/アフター、売上/販売管理、マーケティング、POS・EC連携など、やること・考慮しなければいけないことが多岐にわたります。
店舗、什器、接客などECではほぼソフトウェア化されていた要素がハードウェア化されるため、管理やメンテナンスについてもECとは異なった知識・経験・労力が必要になってきます。また、新たにテナント賃料支払、什器調達やメンテコスト、運営ができる人材獲得、現場スタッフへの給与報酬など、当面かかる費用だけでも大きな額になり、失敗すれば会社への大きな負債になってしまいます。
近年こうした課題を抱える企業を支援するスタートアップが現れており、RaaS(Retail as a Service)、ゴーストリテイラーなど様々な呼び方がありますが、実店舗の企画・構築・運営を支援するソリューションを展開しています。
本稿ではリテール分野で新たなソリューションを展開するスタートアップを取り上げ、顧客の抱える課題を解決し成長を支援するビジネストレンドを捉えていきたいと思います。